面影橋姉妹の日々

突然意識不明になってしまった妹と姉の日々を綴ります

記録

妹には、メモや記録をつける習慣がありました。              毎日の買い物メモ、生協の注文や日々の献立、飼い猫まるくんの飼育メモには、食べたフードの量、飲んだ水の量、おしっこの量まで!何もそこまで記録しなくてもいいと思うのですが、これは、前にフェレットを飼った経験からのようです。アラレちゃんという名前の、小柄な雌のフェレットでしたが、5歳でインスリノーマという病気になり、闘病の末に亡くなったのです。体重は1キロに満たず、投薬管理のためには、細かいメモが必要でした。亡くなったのは1月9日でしたが、その日のメモは、年が明けて買い替えたばかりのノートに、もうこのノートに書くことがなくなったことと、あられちゃんへの感謝の言葉が綴られていました。その後、ペットロスで繊維筋痛症になりながらも、懸命に治療して、数年後に迎えたのが黒猫のまるくんです。まるくんを自宅に連れて帰った日のノートには、まだ小さかったまるくんが、物怖じせず馴染んでいく様子が、愛おしさと喜びに溢れた言葉で書かれていました。まるくんは、今年7歳。あと10年分くらいはノートが続いてほしかった・・・

片付けていると、買い物メモやレシートも出てきました。買い物メモはいつのものなのか、私の名前とビールと書いてあります。私が来ると、いつも私の好きな銘柄のビールを冷やしておいてくれました。ゆきはいつも麦焼酎。この日は、たぶん、やってきた私とふたりで遅くまで飲んだのでしょう。

12月1日のスーパーのレシートもありました。倒れる前日のものです。最後の買い物。暑い日も、寒い日も、痛む体で買い物に行ってくれたよね。ありがとう。レシートをたたんで、バッグにしまいました。ここにも、妹が一生懸命生きた証がありました。

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宝くじとダウジング

実家から歩いて15分くらいのところに、宝くじ売り場があります。妹は、以前宝くじ売り場で働いていたことがあり、宝くじには馴染みがあります。父も、スクラッチをやるのが大好きなので、父の日や誕生日のプレゼントの定番になっています。よく妹と2人で買いに行っていた売り場へ、今は1人で行きます。この半年余りの間に、200円のスクラッチで、10,000円が2回当たりました。妹は、いつも、ジャンボを当てるより、ロト6とかで、少額を当てた方が確率がいいと言っていたけれど、払った金額を考えると、確かにその方が割がいいかもしれません。

レイキの講習を受けた時、先生が、ペンデュラムのダウジングを見せてくれました。鎖の先に、紡錘形のおもりがついていて、くるくる回すものです。その時は、コックリさんみたいだなぁ、と思ったのですが、調べていくうちに興味を感じたので、入門講習を探して受けてみました。短時間のレッスンでは、今のところ、さっぱり反応してくれませんが、練習法の中に、宝くじの番号をあてるというのがあり、早速やってみようと思いました。当たるも八卦、っていうやつですね。

考えてみると、レイキとか、ダウジングとか、自分が本気でやるとは、ちょっと意外ですが、世界は思いもしない方向へ広がっています。妹は霊感が強くて、スピリチュアル系のものが好きなので、一緒にやれたら楽しかったのに、それが残念ですが、せっかくの出会いは、無駄にせず、試してみたいと思います。

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ペンデュラムとスクラッチくじ。

介護は続く

父はあと半月で92歳になります。在宅酸素の濃度は、4〜6リットルと、だんだん厳しくなってきていますが、食事、トイレ、入浴は介助なし、服薬も概ね大丈夫です。それでも、寝起きは特に、間違い、勘違いがよくあるので、酸素の管理や、薬の確認は欠かせません。1人でいるのを嫌がるので、長時間留守にすることはできません。あとは、3度の食事と、洗濯、掃除。介護としては、そんなに大変ではないと思います。訪問診療や、介護タクシー、各種機器のレンタルなど、妹が敷いてくれたレールを辿っているだけです。それでも、今まで自分の都合を中心に暮らしてきた私にとっては、何かと制約を感じることがあります。コロナの感染者もまた増えてきて、ニュースを見ると憂鬱になったり、細かいこともいろいろあって、四六時中、2人で顔を合わせていると、息詰まる時もあります。妹の気持ちが今になってわかります。もっともっと、ゆきの話を聞いてあげればよかったのに、そうしたら少しは気持ちが楽になったのかも知れなかったのに。ごめんね。

最近時々耳にする、8050問題、うちの場合は9060になってしまいますが、他人事ではないと思うようになりました。何かあったら力を合わせてやっていこうと思っていた妹は、今はもう相談に乗ってはくれません。私自身は、夫が支えてくれているので、ありがたいのですが、それでも、自分の生活を放り出したまま、自分の時間に限りがあることも、忘れてはいられません。宙ぶらりんなまま、無為に月日が過ぎていきます。

もう一つ、最近思うのは、ヤングケアラーのこと。今まで、切実に考えていなかったけれど、世の中には辛い現実の犠牲になっている人が沢山いるのですね。私なんか、この歳まで自分の人生は自分のものだと思って生きてきたことが、どんなに恵まれていたか、今になって気がつきました。自分の次の世代にも、負担をかけずに生きていきたいと強く思います。

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散歩の帰り道に見た空。雲の向こうに太陽がある。

雑草くん

散歩の途中、いろいろな植物を目にします。店先の植え込みや、庭の草花、道端の雑草などが育っていくのを見て、季節の移り変わりを知ることができます。最近は、知らない植物があると、名前を調べられるアプリがあるので、便利に使っています。

いつも歩いている地元の散歩コースは、渡良瀬河川敷の道なので、冬は赤城下ろしで前に進めないほどですが、夏は、猛々しいほどに夏草が生い茂り、道を塞いでしまうこともあります。それに比べると、実家の周りの散歩コースでは、雑草も幾分おとなしいようです。ある日、空き地で背の高い雑草を見かけました。「あっ、雑草くんだ!」

昨年の夏、妹に、実家のベランダのプランターから、知らない草が生えてきて、どんどん伸びてるんだけど、なんだろう?と聞かれました。アプリで調べてみると、それは、ヒメムカシヨモギという雑草で、地味な花を咲かせる、どこにでもある種類でした。妹は、雑草と聞いてちょっとがっかりしていましたが、情が湧いてしまって、雑草くんと名前をつけて、抜かずにせっせと水をやり続けていました。すくすく伸びて、人の背丈くらいになって、その後はどうしたのだったか、今年は生えてこないところを見ると、種はできなかったようです。

ただの雑草なのに、友達にあったような、懐かしさを感じることもあるんですね。

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去年の雑草くん。

 

 

図書館にて 絵本はセラピー!

毎日している散歩も、木枯らしの頃から、いつの間にか夏の暑さに汗をかくようになりました。散歩コースの最後は、マンション敷地内のスーパーで、買い物して帰ることにしていますが、このスーパーの3階に市立図書館があります。私は、長年小学校の図書室でパートをしたり、読み聞かせのボランティアをしたりしていたので、本も図書館も大好きなのですが、私は市民ではないし、実家の誰も利用券を持っていなかったので、どうせ借りられないなら目の毒!と思って、行ったことはありませんでした。ところが、ある日、絵本なら、借りなくても、その場で読めることに気がついて、散歩の最後に図書館に寄って、絵本を読んで帰ることにしたのです。

図書館自体は新しくはないし、スーパーの3階というだけあって、それほど広くもなく、蔵書も多くはないのですが、流行に走らず、昔からのスタンダードを大切にしながら、要所を抑えた充実した蔵書に、感激してしまいました。私の地元に比べると、開館時間が長く、閉館日が少なく、貸し出し冊数は15冊、読み聞かせのイベントなども多彩、という利用者には嬉しい図書館なのです。それからはほぼ毎日、図書館に寄って、その日、目についた絵本を端から手に取って、腰を下ろして読みます。お気に入りの、自宅にもある絵本、前に読んだり、知っていてもうろ覚えの絵本、読み聞かせグループのおすすめの絵本など、毎回、嬉しい出会いがありました。中には、懐かしい絵本や、思わず笑ってしまう場面も、涙してしまうお話も、絵の美しさに感動してしまうページもあり、短時間なのに、長編映画でも観たような感じです。悲しみで押し潰された私の心の中に、つっかえ棒のような、安らぎの場所ができたように思えました。絵本を読んだ後は、不思議と心が軽くなって、元気が出ました。絵本のセラピー効果について、知ってはいましたが、自分で実感することになるとは思いもしませんでした。

だんだん本を借りられないことに我慢できなくなってきて、ついに、図書館の方に、高齢の父の代理で借りたいとお話しして、父の貸し出しカードを作ってもらいました。晴れて本を借りられるようになり、早速、『犠牲 わが息子 脳死の11日』の柳田邦男さんの、『大人が絵本に涙するとき』を読みました。硬派のジャーナリストというイメージの方ですが、たくさんの苦しみや悲しみの中から、絵本に光を見出した経緯を知って、やっぱり、絵本ってすごい!と思ったのでした。

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心に残った絵本。どちらも、悲しいけど、忘れられない絵本です。

読んだ絵本は、タイトルを読書アプリyomooに残しています。

 

レイキとの出会い

いろいろ検索していた時、私が釘付けになったのは、レイキでした。ハンドパワーの一種で、ずいぶん前から、知ってはいましたし、妹にピアノレイキというCDをプレゼントしたりしていたのですが、ちゃんと理解していませんでした。レイキは、スピリチュアルや宗教の延長のようなものではなく、普遍的な、誰にでもできるヒーリングだということ、しかも、離れていても、遠隔で作用することができ、人でも動物でも、植物や物にも送ることができるというものなのです。

妹に会うことができない今、私がやりたいことは、まさにこれでした。なるべく早く、レイキを使えるようになるには、どうすればいいのか、必死で調べ、最寄りのレイキマスターを探して、講習を受けました。初めは半信半疑の部分もありましたが、ダメで元々と、一生懸命練習するうちに、少しずつ手応えを感じるようになり、妹にも届いて、何かしら効果があるに違いないと信じるようになりました。

レイキの良いところは、自分にも、送る相手にも副作用やタブーはなく、フィジカルにもメンタルにも効果があり、他にも応用がきくこと、一度できるようになれば、よくある何かのように、更新料を払ったりしなくても、ずっと使えるというところです。早速、父にもやってあげました。すると、父が、昔、祖母にもよくやってもらったというのです。今91歳の父が子供の頃と言えば、80年くらい前ですが、特に珍しいものではなかったと。当時は、レイキではなく、靈気だったわけですが、かなり普及していたようです。私の夫や子供に話しても、まともには取り合ってくれませんでしたが。

どうして、もっと早く、レイキに気づかなかったのでしょうか。私は悔やみました。もし、一年でも早く、やり始めていたら、絶対妹にも勧めたし、一緒に練習したり、送り合ったりして、楽しかったでしょう。妹も、あんな発作を起こさずに済み、今も以前と同じ毎日が過ごせていたかもしれません。姉として、してやれたかもしれないことを、みすみす見過ごしてしまって、申し訳ない気持ちでいっぱいです。何年か前、妹と一緒に行った整体院で、ちっとも効かない施術の後、クリスタルやら、おもちゃの剣のようなのを出されて、2人とも引いてしまったことがあり、何となく、疑い深くなっていたのは事実でした。あれがレイキだったらどんなによかったか!                      ゆき、ごめん。 

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面会解禁

6月から、妹の病院の面会が解禁になりました。と言っても、月に2回、1名ずつ、5分間だけなので、6月は長男と次男が行き、7月の1回目で私、という順番です。5ヶ月ぶりにゆきに会える!先に行った甥っ子たちから様子は聞いていましたが、やはり自分で会ってみないとわかりません。はやる気持ちを抑えて、面会に臨みました。

3人部屋の真ん中に、妹のベッドがありました。血色は良く、いくらかスリムになっていましたが、今にも目覚めて何か言いそうに見えました。看護師に聞くと、安定していて、気になることや問題はないということでした。短い面会時間での印象では、いろいろな悩みや苦しみから解放された、素のままの妹が生きて横たわっている、という気がしました。柳田邦男の『犠牲 わが息子 脳死の11日』の中に、昏睡状態の息子さんについて、似たような記述がありました。また、アーノルド・ミンデルの『昏睡状態の人と対話する』では、こういう時、本人は夢を見ているのだという説明もありました。妹は、どんな夢を見ているのでしょうか。楽しい夢だといいな、と思いました。

今の状態について、妹本人は、長引くことを良しとしないと思います。精神的にも、経済的にも、息子たちや私たちへの負担を増やすことは、望まないはずです。以前、そんな話をした記憶があります。でも、実際、そんなことが起こるとは、妹も私も、想像できていませんでした。

病院からの帰り道、私の心の中は、妹と私の、楽しかった時間は、もう本当に終わってしまったんだ、という悲しみでいっぱいでした。

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よく散歩した白子川