面影橋姉妹の日々

突然意識不明になってしまった妹と姉の日々を綴ります

遅れたけど

気がつくと、夜中まで賑やかだった蝉の声はまばらになって、アオマツムシの鳴き声が聞こえてくるようになりました。

葬儀に参列してくださった、妹がとても親しくしていた方のところへご挨拶に行きました。妹が以前住んでいた私鉄駅前のイタリアンレストランの奥さんです。パスタがとても美味しくて、妹も一時期パートで働いていたこともあり、家族みんなでよく食べに行っていました。妹とは、いつかまた食べに行こうと言い合っていましたし、妹が倒れてからは、「早く良くなって、2人で4月にはお誕生日祝いをしに行こう!」と、心の中で約束していたのです。妹がいつも決まって食べるのは、ベーコンとキノコのトマトソーススパゲッティでした。それと、ブラックのアイスコーヒー。夏でも冬でも、パートの賄いでも、必ずそれを頼んでいました。

スーパー銭湯にみんなで泊まりに行った帰り道、両親と、妹と私と、それぞれの2人の息子たち、総勢8人で、楽しい旅の締めくくりに、美味しいパスタを味わうのが恒例でした。今思い出すと、あの頃が一番楽しかったような気がします。今回は、私1人ですが、妹はきっと一緒に来ていると思いました。店に着くと、久しぶりなのに、前とちっとも変わらない雰囲気と、物音や、お客さんたちの様子に、まるでその辺から妹がひょっこり現れそうな気がしました。自分にはホットコーヒー、妹にはアイスコーヒーを頼んで、小さな声で、「ゆき、ハッピーバースデー!」と言いました。4ヶ月も遅れちゃったけど、やっと来られたね。

奥さんとは、長い間のいろんな思い出や、妹のこと、近況など、積もる話をして、お店を後にしたのでした。

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