面影橋姉妹の日々

突然意識不明になってしまった妹と姉の日々を綴ります

空しい抵抗

病院の医師も、ソーシャルワーカーも、当たり前のように長期療養型病院へ、と言いますが、そこでは、積極的な治療はできないとのこと。要するに、現状維持で、何があっても、看取るだけ、という病院なのです。事務的で、取り付く島もない言葉でした。まだ、倒れて1ヶ月もたっていないのに、諦められません。蘇生後脳症とは、心肺停止から蘇生した後、脳に損傷が残ってさまざまな障害を起こすものです。妹の場合、脳浮腫のため、意識も自発呼吸も戻らない状態でした。それでも、回復する可能性が全くないとは言えないと思っていました。また、医師からは、妹の不整脈は、QT延長型不整脈の疑いがあると言われました。聞いたことのない病名でしたが、遺伝性もある深刻な病気だといいます。妹は、確かに不整脈があると言っていましたし、もう検査をすることもできませんが、これからまた発作が起こる可能性があります。何とか、もう少し治療を続けてもらえる病院に入院させたいと強く思いました。ソーシャルワーカーにそう言うと、「私は専門家ではないので、そういう病院への紹介はできないので、自分で探してください。」と言うのです。病院のソーシャルワーカーは何が専門なのでしょうか?私は、自分で、スマホを頼りに、東京と埼玉の病院に片端から問い合わせました。そしてわかったのは、今の日本の病院のシステムでした。私たちは、素晴らしい保険制度の恩恵を受けていると思っていましたが、それは同時に、病院や医師の側の利便性や採算性のために決められた枠組みに嵌められているということなのでした。

まず、妹のような患者は、今いるような大きくて高度な医療を行う病院からは、同じ程度の病院に転院することはできないのです。病状の格付けをされたら、それに従って、設備も、医師やスタッフの数も、薬も、等級によって決められていて、分担通りに受け入れるシステムなのです。奇跡なんて起こる余地はないのです。どこに電話をしても、ろくに話も聞いてくれず、入院している病院のソーシャルワーカーから連絡するようにと言われてしまうのでした。中には、親身になって話を聞いてくれたところも、2ヶ所だけありました。結果は同じでも、共感してくれる人がいるということは、心に沁みました。

専門医のセカンドオピニオンも聞きに行きました。そこでは、妹のような人はたくさんいて、もし治療する方法があるならノーベル賞ものだということを、丁寧に、諭されました。担当医の言うことは間違っていないと、言われました。

結局、気管切開して人工呼吸器を付けていても、ウイニング(人工呼吸器からの離脱)のトライをしてもらえる医師がいて、もしまた心臓発作が起きても、最低限の蘇生処置をしてくれるという病院を探して、ソーシャルワーカーに告げると、「そこをお薦めしようと思っていました」と取りすました言葉。精一杯の選択だったのに、ただ無力感を感じてしまいました。

こうして、倒れてから2ヶ月後、妹は、長期療養型病院に、転院したのです。

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妹がベランダで育てていた小菊が、寒い中、やっと咲きました。妹に見せたい!